狩猟採集民のように走ろう!

狩猟採集民について学びながら、現代社会や人間について考えるブログ

インターミッテント・トレーニング

前回のエントリーで、2012年3月に田中宏暁先生と会食した時にこんなことを伺ったと書きました。再掲します。

新しいトレーニング法はありませんかと訊ねると、まだ仮説段階だと前置きしてひとつ教えてくださいました。1〜2キロ走れるスピードで1分走り、完全に4〜5分休養するのを繰り返すことが効果的ではないか。ただ、本数は聞き漏らしました》

「ランニングマガジン クリール」2013年3月号 に田中先生が新しい練習法を紹介されています。記事のタイトルは「田中宏暁教授の最新マラソン練習インターミッテント・トレーニング 1分間走で走りが変わる」。インターミッテントとは間欠的・断続的という意味です。拝読すると、会食したさいに教わった練習法だとわかりました。

目的はミトコンドリアの活性化です。細胞の中の小器官ミトコンドリアは、酸素を取りこんでエネルギーを作り出す「エネルギー製造工場」。ミトコンドリアに刺激を与えると、細胞内で数が増えたり、一つ一つの機能が高まる。多くのエネルギーを作り出すことができれば、それだけ有酸素運動の能力が高まります。

順を追って書きます。
           ★
① 炭水化物が分解されるとグリコーゲンというエネルギー源が蓄えられる。
② グリコーゲンが消費されると、それにくっついていたタンパク質AMPキナーゼがフリーになる。
③ AMPキナーゼは、PGC-1αという遺伝子の発現を促進する。
④ PGC-1αが引き金になり、ミトコンドリアのもろもろの遺伝子が起きてきて、ミトコンドリアの機能が高まる。
           ★
田中先生は「ミトコンドリアの機能を高めるためには、簡単にいってしまえば、グリコーゲンが枯渇した状態をつくり出せればいいのです」と書かれ、次の二つの練習法を挙げています。


◆(全力30秒ダッシュ+4〜5分つなぎ)レスト挟み計4本

全力30秒ダッシュを2本やると、グリコーゲンの量が64%になる。

このあと、乳酸が溜まり血液が酸性に傾くと、グリコーゲンの分解を制御しているPFKという酵素が抑制されてしまう。グリコーゲンが使えなくなってしまうため、30分〜1時間軽い運動でつなぐ(休息よりも、軽い運動で乳酸を使う)。

ふたたび30秒ダッシュ2本。これでグリコーゲン量は41%まで下がる。

過去の著書では坂道30秒×5本を推奨されていました。この方法はその進化型なのでしょう。


◆インターミッテント・トレ
(Vo2max60秒+4分つなぎ)

最大酸素摂取量の100%の強度で1分間走り、ゆっくりジョグで4分間つなぐ。これを12〜15本。

最大酸素摂取量は2000〜3000mを全力で走るくらいのペースと書かれています。

インターミッテント・トレーニングの目安のペースが表になっています。

それを元に、1分間で進む距離を私が計算してみました。

フル ハーフ 3000m ペース  距離
4時間50分 2時間21分 18分00秒 6:00/km 167m
4時間30分 2時間10分 16分30秒 5:30/km 181m
4時間00分 1時間56分 14分40秒 4:40/km 214m
3時間45分 1時間48分 13分45秒 4:35/km 218m
3時間30分 1時間40分 12分40秒 4:10/km 240m
3時間15分 1時間33分 11分45秒 3:55/km 255m
3時間00分 1時間25分 10分47秒 3:35/km 279m

《走るペースにもよりますが、1000mのうちの200〜300mを疾走して、700〜800mをジョグでつなぐというパターンが実践しやすいでしょう》とあります。

1,000m5分回し、との仰せですが、先生、無理です。どのクラスでも平均5:00/km(サブ3.5ペース)の12〜15km走という計算になっちゃうもの。たとえぱサブ4目標の人が4分40秒ペースで218mを走ったあと、782mを4分でつないだら5:06/km。レースペースを遙かに上回っているのでリカバリーになりません。

緩走期はもっとゆっくり(6:00/km〜8:00/km)ペースで5分まわしか、700mをだらだら走っての1キロまわしか……。そんな感じでやればいいんでしょう。

昨日、インターミッテント・トレーニングのペースをつかむため8本やりました。じつはうろ覚えで、設定を300m1分、700m4分と勘違いしていたため、300mを60〜65秒で走り、700mを4分でつなぎましたが、5:40/kmくらいのつなぎがだんだんきつくなりました。私は1,000mでまわすのはやめ、緩走はもっと遅いジョグにします。

 

その記事で田中先生は、持久走とスピードを磨き、それを融合したスピード持久力をつける従来のマラソントレーニングで、体がどう変わったか証明できる人はないとおっしゃり、《運動刺激と遺伝子という方向からアプローチしていくと、複雑なトレーニングは必要ないことがわかってきたのです》と書かれています。

過去にも、著書『賢く走るフルマラソン』(2005)では、インターバルトレーニングは必要ないが、やるなら、急走1,000mに対し緩走を1,000mにし、馴れたら緩走を500mにせよと書かれていました。『ランニングする前に読む本』(2017)なると、インターバルは、目標タイムの平均スピードで1,000m走り500〜1,000mでつなぐのを5〜10本とお書きになっているのです。ほかの誰よりも強度が低いのが特徴です。

科学者ですから、エビデンスに基づいて発言されているはず。

誰かが実践してみせるべきでは?……え、私?

 

そうですね、先生にお目にかかったとき、私は『賢く走るフルマラソン』を日本一実践してきたと申し上げたのです。

今後も田中先生の理論を実践し、証明するためだけに走ります。

ランニングマガジン courir (クリール) 2013年 03月号 [雑誌]

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賢く走るフルマラソン―マラソンは「知恵」のスポーツ

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