深夜の坂道ダッシュを終え、ゆっくりジョグで帰ってきました。
自宅マンション近く。
0時まわってます。
向こうから、シャカシャカ音を立ててママチャリが向かってきました。結構スピードを出している。ライトは点いています。
こっちにまっすぐ進んでくるので、道の端に寄りました。向こうも寄りました。さらに寄りました。向こうも寄りました。
さては私を暗殺に来た刺客で、自爆覚悟で正面衝突する気だな?
いや、無理です。敵と私のあいだには電柱がある。
ところが、電柱をよける気配がまったくない。
私の頭にある旧式のコンピュータが計算しました。あのスピードで電柱に当たると、人間と電柱のどちらのダメージが大きいのか? ジーガシャガシャ……口から穴の空いた長い紙が出てきました。
激突する寸前、私が「危ない!」というと、自転車漕いでいたやつはハッと顔をあげます。大学生くらいの男でした。さいわい若いだけあって反射的にハンドルを切り、そのままシャーッと去って行きました。
どうやらスマホを見ていたようです。
あんなヤツ電柱にぶつけてバチを当ててやればよかったと少しだけ思いましたが、血だらけになるか骨折してころがった男を介抱して、救急車呼んだり事情をきかれるのも邪魔くさい。今日のところは見逃してやる。運のいいヤツめ。