狩猟採集民のように走ろう!

狩猟採集民について学びながら、現代社会や人間について考えるブログ

ガラパゴス化する日本マラソン。

 前置きしておきますが、私は「マラソンで日本にどうしても勝ってもらいたい」とは思っていないんです。ケニアやエチオピア選手も日本人同様好きな選手がたくさんいますし。ただ、日本マラソン界についてボンヤリ感じていることを──。

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 誰がつけたかわからないけど、ガラケーってうまいネーミングだと思います。
 考えてみれば、島国・日本でガラパゴス化しているものはいろいろあり、そもそも日本語からしてそうなのです。かりに海外のメディアが日本を批判していたとしても、大半の日本人は英語を読めないから情報が広がりません。

 日本のマラソン界もガラパゴス化していると感じています。「日本人1位」という不思議な言葉が誕生して、それが明瞭になってきました。
 先日の東京マラソンは見ていないんですが、オリンピック代表を賭けて走った日本人選手は互いに様子見した挙げ句、共倒れになったんだとか。代表選考がなければ違った展開もありえたでしょうが、なんだか象徴的なできごとでした。ワールドマラソンメジャーズに選ばれた東京マラソンには海外の有力選手が数多く参加するので、アフリカ勢との差を再認識されられ、日本マラソン界の停滞が顕在化します。
 生島淳の著書『駅伝がマラソンをダメにした』を思い出します。自身も箱根駅伝のファンである生島氏ですが、箱根駅伝やニューイヤー駅伝の人気が高まり、学校や企業の宣伝(たとえば箱根で優勝した学校は出願者がグンとアップするといいます)として重要視されるようになってからマラソンが地盤沈下したと書いています。ときどき目にする駅伝批判は基本的に生島氏の意見を踏襲しているようです。
 言うまでもなく駅伝という競技自体がガラパゴスです。駅伝の魅力もわかります。マラソンと違い変化が多く、劇的な逆転劇も起こりやすい。ときにはトラブルもある。箱根駅伝であれば、正月に集まった親戚との話題を提供してもくれる。
当然、学生は箱根駅伝を目指します。4年間で燃え尽き引退する選手もある……。
だから箱根の区間記録が短縮されていくのにマラソンの記録は十数年も更新されないという現象が起きています。
 おそらくテレビ局やスポンサーとの兼ね合いでオリンピック代表選手の選考レースが男女ともに3つずつ(世界陸上を入れると4つずつ)あります。数ヶ月かけて「日本人1位」の駆け引きをやっているようです。こうした選考方法に振り回される選手が気の毒です。

 今回、果敢にも青山学院の選手が東京マラソンを走り、うち下田裕太選手は十代でのマラソン日本最高記録を更新しました。これに限らず、最近の青学はガラパゴス化した常識を覆そうとする姿勢が見えて、とてもいい。もしも日本のマラソンを強くするなら、学連主催のフルマラソンを開催するのがいいのかもしれません。瀬古選手だって早稲田時代からマラソンを走っていたんだし。

駅伝がマラソンをダメにした (光文社新書)

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瀬古利彦 マラソンの真髄―世界をつかんだ男の“走りの哲学”

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