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『ジョコビッチの生まれ変わる食事』

ノバク・ジョコビッチ著『ジョコビッチの生まれ変わる食事』を読みました。

テニスの王者・ジョコビッチ選手は共産主義支配下のセルビアに生まれました。テニスは全然盛んじゃなかったんだそうです。彼はいいコーチに恵まれ、NATO軍の空爆などで苦労しつつも成長し、ついに世界ランク上位に食い込みます。ただ、試合の途中、体調不良に見舞われ、棄権することがたびたびありました。

試合をたまたまテレビ観戦した医師が、ジョコビッチに驚くべきことを助言しました。突然見舞われる不調の原因は、小麦グルテンに対するアレルギーだったというのです。グルテンは、パンやパスタのもちもちした食感を生むタンパク質です。5人に1人は何らかのグルテン不耐症であるんだとか。

皮肉なことにジョコビッチの実家はピザ屋です。それでも《オープンマインド》の精神で見知らぬ医師の声に耳を傾け、グルテンフリーに取り組みました。結果、集中力が生まれ、体調は改善され、体重も減りました。直後の2011年はグランドスラム3冠はじめ10のタイトルを獲得、43連勝を飾ります。

加えて、血糖値を急上昇させる砂糖や乳製品も控えているそうです。また、本書には、1年のうち11ヵ月プレーするための日々の過ごし方やストレッチについても書かれています。開示されているのは、勝つための思考法、食事法、トレーニング法……。一介のアマチュア・スポーツ愛好家としても学ぶべき点は多々あります。なかには科学的におかしいと思える記述もありますが、いずれにせよ、先入観にとらわれず、まさしく《オープンマインド》で受け容れ、試してみることが必要だとジョコビッチは主張したいのでしょう。

ところが、日本語版には、序文、訳者あとがき、ふたつの解説が、それぞれの立場から文章を載せていて(本文と無関係だとは言いませんが)全体の印象がキメラっぽくなっているのが残念です。セルビアの情勢やジョコビッチのプレースタイル、訳者の食生活や宗教のことなんて、ジョコビッチが書いた本の中心的話題ではないのです。

低糖質をすすめる白澤卓二医師がグルテンの危険について書いた解説は興味深く読みましたが、まるでジョコビッチが炭水化物をすべてカットしているような書き方をしているのはいただけません。朝、ハチミツを飲み、昼は小麦以外の炭水化物を摂り、果物等も食べているジョコビッチは完全糖質オフではないのです。それでもケトン体で糖新生する体質になるのかなあ。

ジョコビッチの生まれ変わる食事

ジョコビッチの生まれ変わる食事