狩猟採集民のように走ろう!

狩猟採集民について学びながら、現代社会や人間について考えるブログ

フォアフット着地か、踵着地か?……に正解はあるのか?

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 結論から書きますと、

  正解なんてわしにゃわからん

 です。【2016/5/5追記=いまはまず、体の中心について考えるべし、と思ってます。でもまあ、読んでってください^^】

 
踵着地の日本人だってサブテン(2時間10分切り)するんですよ。わたくしごとき市民ランナーに、フォアフットと踵着地の結着なんてつけられますかいな。
 上の写真はアディダスの adizero TAKUMI sen。汚い写真でごめんあさあせ。(足底筋膜炎以来、左右差が生じています。外側が減りすぎかな、とも思います)

 このあいだも、「踵つかないで走っている」と言われたんですが、私、平らなところを走る場合、ミッドフットの外側で着地して前足部を地面につけたあと、踵と路面が一瞬キスします。でも、ひとさまからはかかとが着いていないように見えるようです。
 私は長距離は全然ダメでしたが、100〜200Mならそこそこ速かったんです。高校のころ、土のトラックを安いスニーカーで走り、100Mが12秒台半ばでした。短距離はフォアフット着地ですからその癖が抜けないのか、後年、スロージョグを始めても踵着地がうまくできません。身体が硬いので腰あたりの筋肉が過緊張している可能性もあります。
 
 フォアフット着地か踵着地か……の二者択一は、ここ5、6年、ランナーのあいだで議論されてきました。
 私がきちんと走り始めたころは、どの入門書にも《踵から着地しましょう》と書いてあったものです。一冊の例外もなかったんです。だから私はフォアフット着地は禁断の走法であり、フルマラソンを走ると重大な障害に見舞われるかも……と恐怖におびえ、踵着地をマスターしようと努めていた時期もありました。
 何度かフルマラソンを走ったあと、田中宏暁先生の『賢く走るフルマラソン』と出合いました。この本はフォアフットを奨励していたのです。田中先生は「土踏まずをかかとと思って走った」という宇佐美彰朗選手の話を紹介しています。古本屋で宇佐美選手が書いた入門書を立ち読みしたら、やはり「踵から着地しましょう」と書かれていたのはご愛敬でしょうか。

 その後、ケニアやエチオピアのランナーはフォアフット着地だという情報が広まり、裸足ランブームが到来しました。私も入手しづらい時期にビブラム・ファイブフィンガーズを個人輸入で買いました。
 縄跳びを思い出せばわかるとおり、やわらかく着地して地面反力を活かすにはフォアフット着地のほうがいいはず。裸足のまま走って面積が小さい踵で着地すると激痛が走ります。つまりシューズなんてなかった時代、人間が走るとしたらフォアフット着地しかなかったのです(裸足もしくは裸足ラン系のシューズで走る人のなかにも踵着地っぽい人がいますが)。そして! 名著『BORN TO RUN』が翻訳刊行されるにいたり、ますますフォアフットが認知されました。
 ただ、レースなどで見ている限り、サブスリークラスの市民ランナーでも、ほとんどが踵から着地しています。うまく腰をローリングさせれば踵着地もブレーキにならないんじゃないかな、と感じる次第。逆に、フォアフットでだって、爪先でキュッと着地するとブレーキがかかりますしね。
 したがって、いずれが正解という話ではなく、ブレーキをかけずに走る工夫はどちらにもあると思うんです。踵着地はウォーキングの延長、フォアフット着地は短距離の延長という考え方もできますし、体格や身体の癖など体の使い方で個人差が生じるのかもしれません。あらためて書きますが、私がフォアフット着地である理由は、単に「踵着地ができないから」なのです。

 スポーツマイスターズコアの鈴木清和コーチは体型別でフォームは違うと書かれています。『トップアスリートのランニングフォームで自己記録がぐんぐん伸びる本』(スタジオタッククリエイティブ)などをご参照ください。この本によれば、私の体型はフラット着地のピストン型だそうです。もっとも、話のタネには面白いけど、私、この方のおっしゃることはあまり信用していません。

 もしもフォアフットのメカニズムを知りたいのであれば……
 トライアスロン誌「LUMINA」2012年4月号に掲載された吉岡利貢先生の記事がたいへん参考になりました。「前足部で着地するとなぜふくらはぎが痛むか」のメカニズムについて説明しています。前足部で着地すると反動で踵が一瞬落ちます(体重は乗りません)。そのとき生じるふくらはぎの筋肉とアキレス腱の伸張短縮をSSC(Stretch Shortening Cycle)と呼ぶのだとか。《筋肉と腱の弾性を利用したSSCがリズムよく継続されれば、筋出力が同じでも、消費カロリーは少なくて済む》んだそうです。
 ただ、フォアフットに馴れないうちは、やはりふくらはぎに負荷がかかり、痛みをのりこえなきゃならないそうですけど。
 私はもともとフォアフットしかできないので、ふくらはぎの痛みと格闘した記憶はありません。記事にはフォアフット着地はふくらはぎが太くならない、とあるんですが、私のふくらはぎは異様に太い。これはハムストリングスや大臀筋、広背筋が弱い、もしくは使えてない、ということなのかもしれません。ランニングエコノミーをよくするためにも、ケニア人と同じような、枯れ木みたいなふくらはぎが理想です。がんばれ、私……。
 吉岡氏には『毎日長い距離を走らなくてもマラソンは速くなる! 』(ソフトバンク新書)という本もあります。書籍としては、比較的フォアフットについて詳しく書かれています。以下、フォアフットを推奨する本を挙げておきます。
賢く走るフルマラソン』
『BORN TO RUN』
『無理なく走れる“気”ランニング』
『ランニングを極める』
新走法で速くなる! 裸足感覚ランニング

『42.195kmの科学 マラソン「つま先着地」vs「かかと着地」』というNHKスペシャル取材班の本もありますが、この本の元になった番組と比べたら、わかりづらかった。そもそも「つま先着地」という言い方は誤解を生むんじゃないでしょうか。まるで指先がまっさきに着地するみたいです。番組で紹介されたマカウ選手もミッドフットの外側から接地していましたが。

 最初に書いたとおり、フォアフットとヒールストライクの二者択一は、私にはよくわかりません。フォアフットに興味があれば上記参考書をご覧下さい、ということです。
 ひとつ書いておきたいのは、「着地をどうしたからといって、問題がすべて解決するほどランニングは単純ではない」ということ。フォアフットは故障しづらいと言われますが、少なくとも形だけはフォアフットの私だって、大きな故障(足底筋膜炎)で半年間苦しみました。無理に前足部から着地していたら種子骨骨折をしたという話も聞きます。
 踵だってフォアフットだって、効率よく走るためには改善すべき点がある、ということです、きっと……たぶん。

トライアスロン ルミナ 2012年 04月号 [雑誌]

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