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坂口恭平『TOKYO 0円ハウス 0円生活』感想

TOKYO 0円ハウス 0円生活 (河出文庫)

TOKYO 0円ハウス 0円生活 (河出文庫)

 

 坂口恭平『TOKYO 0円ハウス 0円生活』(河出文庫)を読みました。2008年、大和書房から出た書き下ろしの文庫です。著者は早稲田の建築科を卒業。肩書きに建築家とありますが、設計をしたことはないそうです。本書は、多摩川や隅田川に建てられた路上生活者の0円ハウスをフィールドワークし、そもそも人間にとって家とはなんたるかについて考えています。

本の中心に据えられているのは鈴木さん夫婦です。彼らはアルミ缶を売ることで月5万円をかせぎ、すべてを食費に充てていました。近所に生えている食べられる野草を摘み、酒を飲んで楽しく暮らしています。「色々工夫して生きるのは楽しいよ」と、鈴木さん。正直に言えば、マジメにせっせと働いているのがショックでした。労働はついてまわるのね。

彼らはゴミを拾い、工夫を凝らした家を建てています。ソーラーパネルを利用して家電を動かす人もいました。隅田川では1ヶ月に1度、役所の見回りがあるため、そのたび家を解体しなくてはなりません。したがって釘を1本も使わない家もあります。解体は戸内を清潔に保てることにもつながります。

彼らの生活は、子どものころに作った秘密基地を連想させました。

《(略)都市に散らばっているものは、すべて転用が可能である。ゴミなんかないのである。無限の可能性があるのである》は、まさしくレヴィ=ストロースの「ブリコラージュ」(そもそも人は、寄せ集めでいろんなものを間に合わせていた)に通じます。路上生活者のほうが、ツーバイフォー工法の家などよりよほど人間的かもしれません。

10坪以下の建物を作るには資格は要らないそうです。著者は車輪のついた家をつくり、駐車場に置いていました。そしたら家賃よりずっと安く暮らせますね。

路上生活者の家に興味を持ったのは、狩猟採集生活に少し近いかも、と感じたからでした。著者の考えも同じあたりをうろうろしていたのか、ズバリ『ゼロから始める都市型狩猟採集生活』という本がありますが、まだ入手していません。