映画『北の果ての小さな村で』

 映画『北の果ての小さな村で』を観てきました。
 旧デンマーク領であったグリーンランドは、現在、デンマーク王国のなかの地域のひとつであり、自治政府があるようです。
 主人公である青年アンタセースは、デンマークからグリーンランドの小さな村に赴き、教師をすることになります。そこはイヌイットが暮らす小さな村でした。彼はデンマーク語だけで授業をするように命じられましたが、10人の小学生たちは授業に集中せず、グリーンランド語で話します。
 アサーという生徒が出席しない日が続きました。彼の家を訪問すると、祖父とともに犬ぞり猟に行っていたと判明します。学校の大切さを説くアンダースに対し、祖母はこう言い返すのでした。

必要なことはすべて爺さんが教えるわ

 先住民を制したヨーロッパ人は、彼らの宗教・言語・生活様式・思考法などを自分たちのマインドセットに嵌め込もうとします(映画に出てくる村もキリスト教が浸透しているようです)。その背後に、西洋の文明や文化が優れているという前提があるのは明らかです。ネクタイ締めて毎日会社に行くのが普通で、数日間トナカイ猟に行く生活は野蛮にしか見えないのでしょう。子どもは学校で言葉や算数を学ぶのが当たり前。しかし、イヌイットにとって学習とは、狩猟の知識を得ることなのです。
 10人の子どものうち8人が祖父母と同居し、父母と暮らしていないことを変だと感じたアンタセースは村人にその理由を訊きました。すると、祖父母と子どもが養子縁組をすることはこちらではよくあることだ、とぴしゃりと言われるのです。西洋風な固定観念を持ち込もうとするアンタセースは、村人からまったく受け容れられません。
 
 伝統的社会と文明社会、グリーンランド語とデンマーク語、狩猟と農耕(主人公は7代続く農家の出身)、中央と周縁などの対立が映画には隠れています。主人公はいままでと正反対の世界に置かれ、多様性を認めるかどうかの選択に迫られます。学校ってなんだろう、とまた考えてしまいます。
 この映画、説明が過剰でないところは好ましい。少し舌たらずにも感じましたけど。付け足しみたいな恋愛エピソードがないところは好印象でした。自然の映像が素晴らしいので、大画面で観るのがいいかもしれません。