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マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)

 

◉MGCは一発勝負ではない?

今年9月15日に開催されるマラソングランドチャンピオンシップ(以下、MGC)。東京オリンピックのマラソン代表を決めるレースです。

最近気づきました。純粋な一発勝負ではないんですね。2段階方式のようです。

「東京2020オリンピックマラソン日本代表選手選考方針」(PDF)やQ&Aを見て、1時間ほど頭の体操をしました。条件がややこしいので間違えていたらご指摘ください。

私が理解したところでは基本的に──

  • 2019/9/15のレースは名称「マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)
    男女各2名が決定する。
    優勝者は無条件に代表内定。
    「MGC派遣設定記録」というのがあり、男子2時間05分30秒女子2時間21分00秒(対象期間は2017年8月1日~2019年4月30日)を3位の選手がクリアしていて2位の選手がクリアしてない場合のみ、3位が内定する。
  • 2019/12〜2020/3に「MGCファイナルチャレンジ」が行われる。
    (男子は福岡東京びわ湖、女子はさいたま大阪国際名古屋ウィメンズ
    「MGCファイナルチャレンジ派遣設定記録」は男子2時間05分49秒、女子2時間22分22秒で、その記録を突破した選手のうちもっとも速いタイムの選手が代表になれる。記録を突破できなかった場合は、MGC3位が代表となる。
  • 先に結論今回はMGCの1、2位が自動的に代表権を得る。3位もそのまま選ばれる可能性が高いが、MGCファイナルチャレンジの結果待ち。MGC1〜3位の選手もオリンピック参加標準記録を持ってない場合、秋冬にクリアする必要あり。

 

◉ややこしや【MGC編】

今回のMGCでは優勝者と2位が即代表になるようです。
参加選手のうち「MGC派遣設定記録」をクリアした選手は、男女ともにいません。男子の派遣設定記録なんて、大迫選手の日本歴代最高記録を上回っています。設定が高すぎる。

以下、いちおう「東京2020オリンピックマラソン日本代表選手選考方針」から引用しておきます(ややこしいので飛ばしてかまいません)。

3.選考基準編成方針に基づき、以下の優先順位により、日本代表選手を選考する。
(1)MGC優勝者
(2)MGC2位又は3位の競技者の内「MGC派遣設定記録」を突破したMGC最上位の競技者
(3)選考基準(2)を充たす競技者がいない場合、MGC2位の競技者
(4)MGCファイナルチャレンジにおいて、「MGCファイナルチャレンジ派遣設定記録」を突破した記録最上位の競技者。ただし、MGCシリーズに出場(完走)、又はMGCの出場資格を有することを条件とする。
(5)選考基(4)を充たす競技者がいない場合、選考基準(2)を充たしていないMGC2位または3位の競技者

4.選考方法
(1)選考基準[引用者註=3.の](1)、(2)、(3)による選考は、MGC終了時点において、即時内定とする。
(2)選考基準[引用者註=3.の](4)及び(5)による選考は、MGCファイナルチャレンジの男女それぞれの全指定競技会終了時点において、即時内定とする。

 

◉ややこしや【MGCファイナルチャレンジ編】

さて、最後の椅子は、男女とも3つのレースで争われます。

陸連がスポンサーやメディアに気をつかい、各大会の注目度を上げるための、いわば大人の事情なのでしょう。また密室でグレーな選考が行われるのか、と思ったんですが、《「MGCファイナルチャレンジ派遣設定記録」[引用者註=男子2時間05分49秒、女子2時間22分22秒]を突破した記録最上位の競技者》だから、ある意味わかりやすい。コースや天候のことを考慮してないので公平とはいえませんけど。

9月のMGCに参加してない選手にも、チャンスがあるようです。《ただし、MGCシリーズに出場(完走)、又はMGCの出場資格を有することを条件とする》。すなわち昨季のMGCシリーズ(MGC出場権を得るレース)に出て完走していれば、オリンピックのチャンスはあるわけです。

ただし、各レースでクリアしなければならない「MGCファイナルチャレンジ派遣設定記録」は男子2時間05分49秒、女子2時間22分22秒。男子にいたっては日本最高記録が求められます。

男子はびわ湖毎日、女子は名古屋ウィメンズが終わった時点で誰も「MGCファイナルチャレンジ派遣設定記録」をクリアしていない場合、MGC3位が代表に決定します

 

◉ややこしや【オリンピック参加標準記録編】

ところで、オリンピックには参加標準記録があります。

マラソンは男子2時間11分30秒女子2時間29分30秒とのこと。日本マラソン界にとっては高いハードルではありません。しかし対象期間が2019年1月1日〜2020年5月31日なんです。

去年の北海道マラソンや福岡国際マラソンなどでMGC参加の切符を手にした選手には参加標準記録を持ってない選手が多数います。たとえば、大迫傑もそうなのです。

MGCは夏レースですし、タイムは狙えません。順位を気にして駆け引きし、遅いペースで進むと思われます。オリンピック内定者も参加標準記録をクリアするため、秋冬にもう一本公認レースを走る必要が出てくるかもしれません

【追記】さらにややこしいことに、ランキング制度というのもあります。標準記録を突破しなくても、ランキング制度で救われる可能性もありますが、そのためには、やはり2大会走る必要があるので秋冬の大会に参加する必要があるらしい。ええい、フクザツ!

 

◉レース展開予想

MGCが夏マラソンの代表レース・北海道マラソンと同条件だとしましょう。北海道マラソンの歴代最高記録は、男子が2:10:13、女子は2:25:10。MGCはこれに「駆け引き」が加わります。

目的は代表入りです。タイムより順位が重要なので、3位以内(男子は、3位に入れば代表になったも同然です)を目指す展開になりそうです。女子は参加が12選手ですから、みんなグループになって進むか、福士選手あたりが先行して、やや遅れてほかの選手がまとまるかもしれません。先頭から脱落してズルズル後退する選手は、秋冬のレースにダメージが残らないよう、早々とリタイアしてしまう可能性があります。

苛酷なサバイバルレースになりそうです。3位以内に入れても、オリンピック参加標準記録に達しない場合は、秋以降にもう一度走る必要があります。

MGCファイナルでは、オリンピックを狙う有力選手は最後の枠を争い、厳しい条件を避けるでしょう。坂の多いさいたま国際マラソンを走る有力女子選手はいません。男子の場合、東京マラソンがタイムを狙いやすい。福岡国際と東京マラソンもしくはびわ湖毎日マラソンを走る選択肢もあるかもしれません。

「MGCファイナルチャレンジ派遣設定記録」は相当なハイペースです。男子は日本最高記録で一億円&オリンピックとなると格好いいんですけど、オリンピックを意識してハイペースで進み、自滅する可能性も大いにあります。そういう選手の姿はあまり見たくありませんが……。

 

私は東京オリンピックに反対です。真夏のマラソンも開催すべきではないと考えています。世界から最高の選手を連れてきて悪条件で走らせるなんて、ひどい話です。

でも、それを承知で頑張る選手の努力には最大の敬意を払っています。誰ひとりケガせず、力を出し切れるよう、願っています。