少し前に元号についての考えを書きました。
私は「明治以降性質の変わった元号は『日本の伝統』ではなく『薩長暦』。廃止せよとまでは言わないが、不便でもあるし自分は使わない」派です。
今までだって確定申告など必要最低限のケースをのぞき、元号を使っていませんしね。たとえば、阪神・淡路大震災は1995年、東日本大震災は2011年だと知っていますけど、それぞれ平成何年のことか、即答できません。テレビでは平成の回顧ばかりやっていたようですけど、スポーツ中継を飛ばし飛ばしに視聴する以外テレビを見ない私は、幸いそういう番組を素通りして生活していました。
5月1日午前0時、つまり改元の瞬間はタクシーの中で迎えました。
ちょうど、東京から広島に帰省していたんです。
4月30日の夜、私ふくめ地元のラン仲間8人とお酒を飲んでいました。例年、5月の連休に萩往還ウルトラマラニックに参加していた広島のランナーたちです。残念ながらその大会、去年で終わっちゃいました。遅くまで楽しく飲んだあと、実家に向かったのです。広島駅から数駅JR電車に揺られ、そこから短時間タクシーに乗ります。
広島の景気やカープの話なぞをしていたところタクシーの運転手さんのおじさん──といっても私より若いかな──が、「あっ、そろそろカウントダウンですね」と言って車載テレビを点けました。
一瞬、頭にクエスチョンマークが浮かびました。じきにテレビからの音声で改元のことだとわかりました。私はまったく興味ないしむしろ不快ですけど、運転手さんはウキウキしています。賑やかな東京の街の騒ぎがテレビから流れてきました。
やがてカウントダウンがスタート。
テレビの声に合わせ、運転手さんも「5、4、3!」と数えます。そこでプツッとテレビが消えました。
「あっ」とテレビをカチャカチャいじったあと、運転手さんが残念そうに呟きます。「トンネルに入っちゃったあ」
私は心の中で爆笑しましたが、同時に運転手さんが気の毒でした。