ロジャー・バニスター死去88歳。
かつて、1マイル(1,600m)レースで4分を切ることは、エベレスト登頂と同じく、人間には不可能であると信じられていました。いま我々が「フルマラソンでサブ2ができるかできないか」というのと同じく、20世紀半ばには陸上界のホットな話題だったのです。
「1マイル4分の壁」──4分を切ってゴールした途端、死んでしまうかもしれないと考えられていた限界──に挑んだ複数の選手がいました。ロジャー・バニスターもその一人です。
当時、トラックは粗悪で今ほど反撥力がなく、ときにレースは土のトラックでおこなわれ、シューズも改良の余地がありました。科学的トレーニング方法は確立されず、ザトペックが結果をのこしたインターバルトレーニングがせいぜい広まりかけたころでした。加えて、当時の陸上選手は完全なアマチュアで、仕事や学業のかたわら、時間的にも金銭的にも恵まれない環境で純粋に記録と戦っていたのです。
学生ロジャー・バニスターは、呼気を測りながら心肺能力を高め、初めて「1マイル4分の壁」を破りました。1954年のことです。長身の選手がバニスターです。
このときはぺーサーがいたことを非難されました。
彼に続いて4分を切ったライバル、ジョン・ランディとの一騎打ちはこちら。奇跡の1マイルと言われるレースです。
1マイル4分の壁にチャレンジした彼らの物語には心打たれます。刺戟にもなります。もう一度、読まなきゃ、『パーフェクトマイル』 。