狩猟採集民のように走ろう!

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萩往還ウルトラマラニック250km参戦記(2/3)

萩往還マラニック参戦記(1/3)から続く】

5月3日(火)0時〜

最初のチェックポイントである豊田湖畔公園CP(58.7km)に到着したのは1時50分くらいだった模様。ペースは上がりませんが、前後に人が多く、ひとり旅にならなかったのはありがたかった。軽食摂って、水を補充して走ります。足裏の痛みはどんどん増しますが、まだ走れるのだ。

これしきでエントリー料3万8千円をフイにしてなるものか。

最初の夜に仮眠をとる人は少ないと聞いています。周りのランナーと会話しながらやや急な下り坂を走っていたら、真横でドサーッと音がしました。振り向くと、ランナーがヘッドスライディングし、ザックの中身が前方に飛び出しています。

「大丈夫?」と声をかけたら「はい、大丈夫です。寝てました」と返事しながら、立ち上がってザックを拾いに行きます。かかる場合、みんな反射的に大丈夫だと言うんだけど、平気じゃない場合もあるよなあ、と心配しつつ、下りの勢いのまま通り過ぎてしまいました。

約80kmの新大坊エイド(下の写真)では、「車道をふさいだランナーがいたので警告を出した。みなさんも注意してください」と、大会スタッフから指示。

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87kmの油谷中学CP(下の写真)に着くころは夜が明けていました。リタイアを宣告する人がちょいちょいいます。まだまだ時間があるのに、みんな簡単に「やめます」というのが不思議でした。

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預けていた荷物から必要なものを取り出します。近くの食堂で梅干しを何個も入れておかゆを食べ、再スタート。後方からMくんがやってきました。彼は計画的に休憩を入れているらしく、前にいると思っていたら後からやってきたことが何度もありました。

足の痛みもあり、この辺りではだんだん走れなくなり、ウォーク率が高くなっています。早朝だけどすでに暑い。半袖短パン姿です。

スタートしてから約13時間。つまり朝の7時20分くらいでした。ちょうど100kmあたりで大失敗をやらかしました。98.5kmの俵島CPを見落としていたのです。一緒に進んでいたランナーに確認し、トボトボ戻ることに……。140kmの部を走った時も、約6kmロスしたんですよ。やはり100kmくらいのことでした。逢魔が時ならぬ逢魔が距離ですな。

今回はタイムを狙わないこともあり、「いいネタができた」くらいに感じていました。逆走していると、みんなから「どうしました?」と不思議がられます。「チェックポイント見逃しました」と照れ笑いを浮かべると、気の毒がられたり呆れられたり、なかには「ダメじゃないか」と叱られたり。「前回、ぼくもここでやっちゃったんですよ」という方もいました。Mくんともすれ違いました。

1.8km戻ると、「俵島」と大書された看板と、チェックシートに押すパンチがありました。たしかにさっきもこの看板は見たんです。女性ランナーが立ち止まってスマホで撮影していたので、「なんでこんなもの撮るんだろう?」といぶかしく思いながら通り過ぎたんですよね。つまりボーッとしていたのです。往復3.6kmのロス

足裏が麻痺していたのか、わりと走れる時間帯で、きつめの下りも平気でした。ただ、日頃から傾斜に応じてスピードを上げて降りるのが癖になっています。ブレーキをかけてゆっくり下っても、バンバン足を打ちつけても大腿四頭筋にダメージが残るでしょう。このあたりの加減がわかりません。

晴れて、かんかん照りでした。暑くて周囲が眩しい。サングラスが必要だったか。

5月3日(火)12時〜

立石観音CP(117.8km)から、東京からのウルトラランナーと併走することになりました。今回で10回目なんだそうです(今回完踏したら、翌年表彰されます)。さすがに道に詳しく、的確に誘導してくださるので思考を節約できました。感謝です。ウルトラについてもいろいろ伺いました。

途中、津黄竜宮の潮吹という名所に向かう車の渋滞ができていました。歩道がしっかり確保されていない狭い道で、渋滞が起きている逆側を走るんですが、わずかなスペースを縫うように車が追い抜きます。寝不足でふらつくランナーが引っかけられてもおかしくありません。

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千畳敷CP(125.4km)に向かう激坂はすごかった。ローギアベタ踏み級の真っ直ぐな道が空にむかって続いています。12時45分くらいに千畳敷CPに到着。風が強く、風力発電の風車がびゅんびゅん回っていました。

足の調子が悪くなり、ご一緒した上記のランナーとは日置エイド(131.2km)で別れました。そこからは、100歩走って30歩歩いたり、50歩進んで15歩歩いたり、と、ひたすらラン&ウォークで前進。

湯本温泉CPに右折する直前のセブンイレブンでソックスを購入しました。ひさびさに足の状態を見ると、あちこちむけた皮膚が痛々しい。穿いたソックスに、すぐに血がにじみました。シューズに足が入りづらいのはソックスが厚いせいではなく、すでに浮腫みはじめていたのでしょう。ソックスさえ履けば痛みは軽減されるんじゃないかと期待していましたが、さにあらず。一歩一歩、ジンジン痛みます。またしても50歩ラン+15歩ウォーク、50歩ラン+15歩ウォーク……。

エイド&ゼッケンチェックの仙崎公園前(152.2km)を過ぎると、青海島・静ヶ浦キャンプ場の往復12kmが始まります。昨年は悪天候のためカットされたエリアです。いやはや、こちらもかなりのアップダウン。山口県って坂しかないのでしょうか?

写真は青海島の海岸沿いから、法瀬の鼻という場所を臨んだところだと思います。綺麗な景色をじっくり見ないで進むなんて勿体ないなあ。

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静ヶ浦キャンプ場のエイドで大盛りカレーを食べていると、Mくんが現れました。日が落ち始めたので、重ね着してヘッドライトを装着し、私は一足先に再スタート。

ふたたび仙崎公園前でゼッケンをチェックされ、いよいよ仮眠できる宗頭文化センター(176.2km)に向かいます。しばらく暗い道を1人で行きました。地図を見ながら歩くと、足を踏み外し、道脇から40〜50センチ下の、葦らしきものが生えた草むらに落下しちゃいました。右足を着地したあとよろけます。尖った茎でブスッとやったらリタイアだなと覚悟。手をついたあとドサッと身体ごと転びましたが、さいわい無傷でした。お恥ずかしい。前後には誰もいなかったようです。

スタートから26時間くらい経ったでしょうか。広島で目覚めたときから考えれば37時間寝てないことになります。

このころから、幻覚が始まりました。アスファルトに引かれた白線が劣化して、たくさんの亀裂が入っているのですが、その模様がすべて人間の顔のつらなりに見えます。途中で私を抜いたMくん(彼は厳格ではない)がコンビニで休んでアイスを食べています。声をかけて数キロ一緒に走りました。あれ、私の真横にもうひとりの私が走っています。あんた、誰?

やっとこさ宗頭に着いたのはジャスト22時

いろんな方からの情報を綜合して、なんとか21時くらいまでには着きたかったので、少し遅いと感じていました。周囲から「昼間暑すぎて例年より距離を稼げなかった」という会話が聞こえてきます。

1度座ったら立つのが難しい状態。いうことをきかない身体にムチ打って荷物の整理を終えたら22時50分になっていました。

宗頭文化センターの2階の大広間で30分ほど仮眠するつもりでした。隣で横になったMくんが一瞬寝息をたてたあと、私もめまぐるしく展開するシュールな夢を見ましたが、スマホを見れば5分と経ってないのでした。いびきや、誰かが荷物を整理する周囲の音が聞こえ、もう眠れません。隣を見ればMくんもスマホを見ていたので、声をかけて1階で軽食を摂りました。準備をしていた数名でまとまり出立したのは23時45分くらいです。

萩往還マラニック参戦記(3/3)に続く】