陸上中長距離界のドーピング疑惑

陸上中長距離界にとって衝撃的なニュースでした。

いちばん詳しそうな《薬物まみれの陸上メダリスト 12年間で3分の1にドーピング疑い…「陸連は見て見ぬふり」》(→産経ニュース 2015.8.8)を長めに引用します。

 2001年から12年までに開催された陸上の五輪、世界選手権の主に中長距離種目で、授与されたメダルのうち約3分の1に当たる146個(金メダル55個を含む)を、ドーピング(禁止薬物使用)を疑われる選手が獲得していたことが明らかになった。英紙サンデー・タイムズとドイツ公共放送ARDが合同で、 国際陸連(IAAF)が選手約5000人に実施した1万2000件以上の血液検査の結果を内部告発で入手し、専門家が分析した結果として伝えた。陸上界にはびこる薬物禍の深刻さは従来から指摘されていたが、あまりの人数の多さに関係者は最大級の衝撃を受けている。

 検査結果を内部告発

 IAAFの内部告発者がサンデー・タイムズとARDに託したデータは、04年アテネ、08年北京、12年ロンドンの五輪3大会と、01年カナダ・エドモ ントン、03年フランス・サンドニ、05年ヘルシンキ、07年大阪、09年ベルリン、11年韓国・大邱の世界陸上6大会での主に800メートルからマラソンまでの競技者に対して行われた血液検査の結果。これを反ドーピングの世界的権威である豪州の科学者、ロビン・パリソット氏と運動生理学者のマイケル・アシェンデン氏が分析した。
 英BBCなどによると、メダリストの約3分の1が「極めてドーピングが疑われる」、または「正常ではない」と判断されたほか、800人以上の選手に異常値が認められたという。金、銀、銅すべてのメダリストが“灰色”だったケースも数件あり、ロンドン五輪に限ると、10個のメダルを「ドーピングで失格にならなかったのが解せない」選手たちが獲得していた。ロンドン五輪では男子400メートルリレーで2位となった米国チームが第3走者のタイソン・ゲイ (32)のドーピングによって失格となり、後日、銀メダルを剥奪されたが、中長距離のメダリストでは失格者はいなかった。

「陸連、見て見ぬふり」

 疑惑の競技者に日本選手が含まれているかは不明で、五輪2大会連続で男子短距離3冠のウサイン・ボルト(28)=ジャマイカ=やロンドン五輪男子長距離2冠のモハメド・ファラー(32)=英国=は「潔白」だったという。
 また、ドーピングが疑われる選手が最も多いのはロシアで、メダリストの80%以上が該当し、次いで多いのがケニアで18人のメダリストが含まれるとしている。
 パリソット氏は「これほど大量の異常な検査結果はかつて目にしたことがなく、恐怖すら覚える。相当多数の選手たちがドーピングを免責されていた実態は明ら かであり、それを見て見ぬふりを決め込んだIAAFの罪は重い」と憤りをあらわにした。アシェンデン氏も「IAAFの恥ずべき裏切り行為だ」と語った。

(以下略)

もちろん疑惑の段階ですが、ロシアのメダリストの80%以上、次いでケニア選手のメダリスト18人とは……。

ドーピングは短距離や投擲競技などに多い、という印象でした。筋肉増強剤やホルモン剤がまっさき浮かぶからでもありますが、中長距離ランナーに失格者がいた記憶がないのです。しかし、たとえば血液ドーピングにより赤血球濃度を上げることにより酸素運搬能力が増し、持久力アップにつながると言われます。あらかじめ採取しておいた自分の血液を試合前に輸血するだけで赤血球は増えるのです。ランス・アームストログもやっていたと聞きました。

血液ドーピングをどうやって検査できるのか、私には皆目わからなかったのですが、次の記事でなんとなくわかりました。《ショブホワの優勝取り消し 薬物違反でロンドンマラソン主催者》(→スポニチアネックス 共同)という記事によれば、《37歳のショブホワは血液データを蓄積して変化を調べる「生体パスポート」の検査で異常値を示し、昨年4月にロシア陸連から2年間の資格停止処分を受けていた。》とあります。「生体(バイオロジカル)パスポート」という血液の経年観察により、赤血球などの増減をチェックしているらしいのです。面倒なことであります。なお、ショブホワ選手の失格が上記の告発と連動しているのかはわかりません。

《国際陸連、ドーピング疑惑で28人に暫定処分―世界陸上大阪大会も対象》(→AFPBB 2015.8.12 発信地:パリ/フランス)によれば、IAAFは告発の報道と無関係だと前置きし、2005年と2007年の世界陸上に出場した28人に資格停止処分を科した、と報じられました。

ロンドンマラソン、東京マラソンのメダリストにも疑いがあるそうです。

以下は《マラソン薬物疑惑を報道 ロンドン、東京など主要大会で》(→スポニチアネックス 2015.8.9 共同)という記事全文。

 英紙サンデー・タイムズは9日、2001年から12年に開催されたロンドン・マラソンの男女優勝者24選手のうち、7選手が過去にドーピングの疑いがある検査結果を示していたと報じた。
 同時期の世界の主要マラソンで上位3位に入った選手のうち、疑わしい数値を示した選手の割合も示し、東京マラソンは13%だった。シカゴは31%、ロンドン28%、ニューヨークシティー27%、ボストン19%、ベルリンが18%だった。
 2日付で陸上の五輪、世界選手権のドーピング疑惑を伝えた同紙は、今回も内部告発で漏れたとされる国際陸連の血液検査データを基に報じた。
 ロンドン・マラソン最高経営責任者のビテル氏は「今回の疑惑報道を懸念している」との声明を発表し、今後違反が明らかになった場合、賞金の返還に応じない選手に対し、法的措置を取る姿勢を示した。(共同)

世界大会で表彰台に上がることの価値は国によって違います。ある国にとっては疑似戦争であり、一大プロジェクトとして選手強化をはかる国家であれば、組織的にドーピングをすることだってあるでしょう。また、メダルを獲ることで富と名声を得られる国の選手がドーピングの助けを借りることもあるかもしれません。危険を冒し、健康を害してでも表彰台を狙い、記録を狙う選手が今後いなくなるのかどうか……。

この問題、どうなっていくのか。しばらく注目してみます。

リンクした動画は、円盤投げロバート・ハルティング選手(ドイツ)らによる、IAAFへの抗議動画(#hitIAAF)です。


Dear IAAF U damaged our sport this is what we have ...