狩猟採集民のように走ろう!

狩猟採集民について学びながら、現代社会や人間について考えるブログ

金栗足袋について……『陸王』を読みました。

 池井戸潤『陸王』(集英社)の感想です。

 零細企業である老舗の足袋専門業者「こはぜ屋」の社長が、マラソン足袋「陸王」開発を思い立ち、社員はじめいろんな人と協力し合いながら悪戦苦闘するストーリーです。改良に改良を重ねた陸王を、怪我から復帰した実業団選手が履いてくれることになりますが、ライバル会社の妨害があったり、取引銀行から融資を受けられなかったりと、いくつもの障壁が立ちはだかるのでした……。
 さすが定評のあるエンタテイメント作家です。面白くて一気に読みました。何にしてもすんなり進まないところが魅力ですね。予定調和へ一直線じゃつまらないもの。
 ちなみに、主人公・紘一の「紘」の字は、戦後から昭和51年まで人名に使えない漢字でした。八紘一宇の「紘」だからでしょう。おそらく主人公は昭和30年代か40年代生まれなので……あ、こんな情報不要でしたね。
 装丁がまた素晴らしい。カバーは小説風ではないけど、悪くない。表紙の蓮の絵もいい。たぶん誰も気にしないんでしょうが、見返しと別丁扉の用紙の選定がみごとです。

 駅伝やフルマラソンのシーンもあり、盛り上がります。
 私に不満があるとすれば、ベアフット系シューズの魅力が期待したほど書かれていないことでしょうか。
 裸足系ランはフォアフット着地を促し「人間本来の、怪我しにくい走り方を実現できる」と説明され(エビデンスレベルはわかりませんが、そういう研究はあります)、薄いサンダルで山岳ウルトラレースを走破するタラウマラ族も紹介されています。
 でも、おそらくずっと踵着地だったであろう実業団選手が陸王に足をいれたときのファーストインプレッションや、フォームの変化なども読みたかった。そういえば、レース中の茂木選手の心理状態もほとんど書かれなかったような。私のないものねだりかな。著者が勝手な空想を書かない主義であれば、もちろん尊重します。

 マラソン足袋の歴史にもあまり触れられません。
 以下は、後藤正治『マラソンランナー』(文春新書)から得た知識です。
 のちに日本マラソンの父と呼ばれる金栗四三は、1912年、足袋を履いてストックホルムオリンピックを走りました。途中で倒れてゴールできなかったものの、55年後、同地にに招かれ、ゴールテープを切りました。フィニッシュタイム54年8ヶ月6日5時間32分20秒3は世界一遅いフルマラソン記録だとか。ゴール時の写真を見ると革靴です。(余談ですが、『陸王』は金栗四三に「かなぐりしぞう」とルビを振っています。「しそう」と思っていましたが、どちらでもよいとの説も。55年後に発行されたストックホルムオリンピックでの完走証にも「Shizo」とありました)
 1936年、朝鮮半島が日本統治下にあったため日本選手としてベルリンオリンピックに参加し、優勝した孫基禎も足袋を履いていました。
 金栗は、東京ハリマヤ足袋店の主人・黒坂辛作とともに研究し、自転車のゴム底を貼った足袋を考案。1950年代はじめまで日本人ランナーは「金栗足袋」を履きました。
 1951年、ボストンマラソンで広島出身の田中茂樹が優勝。足袋シューズでの快挙でした。レース後のインタビューでは《アメリカの記者たちはしきりに "魔法のシューズ" について訊いてくる。足先の割れた「金栗足袋」である。日本選手が国際大会で足袋を履いた最後のレースでもあった》(72ページ)
 金栗の伝記『走れ二十五万キロ──マラソンの父 金栗四三伝 復刻版(第2版)』でも、黒坂と共同開発したマラソン足袋に関して詳しく書かれています。金栗四三とその弟子・秋葉祐之は、その足袋で下関─東京1200キロを走破したのでした。
『陸王』のなかでは、こはぜ屋の先代がマラソン足袋の開発を試みています。1960年代のことだとすると、廃れた競技用の足袋を復活させようとしたのかもしれません。
 
 ハリマヤ足袋について検索していると、下記のサイトが見つかりました。

 ところで。
 裸足系ランニングだと自然にフォアフット着地になる、といたるところに書かれています。素足でも踵から着地する人を何人も見ているから私は信じてはいませんが……。金栗足袋がどんなふうに磨り減っているのか、画像検索したところ、はっきりわからず。金栗、孫、田中各選手のフォームもヒットしますが、フォアフットである確信は得られません。
 福岡国際マラソンHPのプレーバックをチェックしたところ、第3回優勝の古賀選手はたぶん足袋ですが踵着地に見えますね。

『陸王』のモデルになったマラソン足袋は「MUTEKI」です。私は試し履きしたことしかないんですが、好感触でした。いま履いているビブラム・ファイブフィンガーズがダメになったら購入します。

陸王

陸王

 
マラソンランナー (文春新書)

マラソンランナー (文春新書)

 
走れ二十五万キロ マラソンの父 金栗四三伝 復刻版(第2版)

走れ二十五万キロ マラソンの父 金栗四三伝 復刻版(第2版)

 
 

最近の裸足系ランニングの悩み。

 私、ときどきビブラム・ファイブフィンガーズ(VFF)やルナサンダルなどの裸足系ランニングをします。普段のランニングシューズも格別ソールが分厚いわけではないんですが、裸足系のシューズだと、自分の身体のどこが痛いか、どんなフォームになっているか、よくわかるんです。
 ファイブフィンガーズを最初に履いたのは2010年9月のこと。以前書いた記事と重複するので、今回は繰り返しません。

 今年から骨盤主導を意識するようになり、足がムチのようにしなっている感覚があります。骨盤が回旋して、それにともない足先がついてきて、地面を叩く感じ……そもそも身体の中心しか考えていないので、自分では蹴っているつもりはありません。
 ところが、そのせいか、アスファルトを何キロか走ると、拇指の裏に水ぶくれができて、痛いの痛くないの! 以前は VFF で30kmくらい走ったし、サブフォーくらいできると思っていたのに、今はキロ6分に落としてもダメです。
 水ぶくれは、帰宅後、安全ピンでプチって穴をあければ、それですむんですが、走っているさいちゅうは一歩ごとに痛むのです。
 走り方が悪いのか、単に皮膚が硬くなれば解決する話なのか、わかりません。
 
 ちなみに一夜明けて、大腰筋や腹斜筋、広背筋、お尻周りやハムストリングがうっすら筋肉痛になっている感じです。使いたい部分(身体の中心)を使えている証拠だと思うんですが……問題は水ぶくれです。

湘南国際マラソン応援……12月4日の日記

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 湘南国際マラソンの応援に行ってきました。
 私は平塚駅で降り、相模川の橋を渡るあたりまでジョギング。
 その後、ランナーではないけどマラソンを見てみたいという、仕事上お世話になっている知り合い2人と合流し、3時間半から4時間半くらいのランナーを応援しました。
 写真は、平塚から海に向かって進んだ歩道橋の上から。晴れてて暑かったけど富士山がよく見えました。 参加されたみなさんお疲れさまです。
  その後、近所に住む仕事仲間の先輩に会いに行きました。

 飲みながら、福岡国際マラソンの結果をチェック。故障のため欠場かも、と伝えられていた川内優輝選手がサブテンで3位と知り、驚きました。
 やはりすごいなあ!

走りながらストレッチをする?

わたくし、いま骨盤の回旋の動きは獲得できたことにして、胸部の動きを模索しているところです。

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ベケレもファラーも、肩のラインが傾いていますね。この動き、むかしはバランスをとるためだけだと思っていましたが、今はもっと深い意味があるように感じています。

注意! 以下、またまた例の素人考えですよ。


筋肉や腱を急激に伸ばすことで勝手に縮むことを伸張 - 短縮サイクル(ストレッチショートニングサイクル、SSC)といいます。伸ばすと縮む、縮むと伸びる……要はバネです。

ランニングに有効とされる代表的なバネは、アキレス腱です。フォアフット着地により、アキレス腱のSSCが使えるのだと、いろんなところに説明があります。なわとびと同じですね。フォアフットで着地し、そのあと踵が落ちることでアキレス腱が急激に伸ばされ、縮もうとする力でジャンプする。

私はいま、大腰筋のバネを利用する方法を考えています。うまく大腰筋を利用できれば、拮抗筋であるハムストリングや臀筋も自然に使えるようになるはずです。

筑波大学の吉岡利貢さんは、フォアフット着地を解説されるなかで、興味深いことをおっしゃっています。(『LUMINA』2012年4月号、53ページ)

 アフリカ系の長距離ランナーはフォアフット着地で走っているが、「日本人は彼らと骨格も筋肉の質も違うのだから、真似しても同じ走りはできない」という否定的な意見も多い。現にアフリカ系の走り方を取り入れようとして故障したランナーもいる。
 しかし、吉岡さんは「アフリカ系のランナーはフォアフットでふくらはぎ・アキレス腱をSSC的に使っているだけでなく、足を大きく後ろに伸ばして、大腰筋でもSSCの力学を使っていると考えられています。確かに彼らは骨盤の角度が違う、大腿骨と体幹をつなぐ大腰筋が先天的に発達しているなど、日本人とはちがう点があるので、全く同じ走り方をすることはできませんが、力学的な仕組みを理解すれば、日本人の走りを改善するヒントは見つかると思いますね」

この言葉は何年間も謎でした。日本人のはしくれである私も、「力学的な仕組みを理解」して「大腰筋でもSSCの力学」を使えないものか……。

もしかすると……。

伸ばせば勝手に縮むのであれば、伸ばすことを意識すればいい。となると、どのストレッチの本にも書いてある「大腰筋ストレッチ」を、走りながら再現すればいいのではないでしょうか。

大腰筋の代表的なストレッチといえば、足を前後に拡げるランジでしょう。仮に左足を後ろに引いている状態であれば、左手を挙げて体側を伸ばし、さらに右に倒したり、時計回りにねじったりすれば、左の大腰筋は伸びます。

要するに、このストレッチを応用してランニング中に大腰筋を伸ばす姿勢とは、

①骨盤を立てる(=まずはきちんと筋肉を張る)こと。
②支持脚が地面を押す力で骨盤をグイッと前に出すこと。
③上体をくねらせて脊柱の大腰筋を引き上げること。

じゃないでしょうか。

②の骨盤の回旋は何度も書きました。

今回は③について考えます。

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身体をくねらせているようすを図示してみました。

肩のラインが傾くことにより、左の写真の場合、片方の体側が伸び、片方は縮んでいます。このとき、伸びているほうの大腰筋はピンと張っているはずです。

実際、ここに回旋の動き(②)がプラスされます。左の写真は右肩が、右の写真は左肩が出ています。骨盤の動きは見えにくいけど、同じほうの腸骨がやや遅れてグッと前に押し出され、ますます大腰筋が伸びます。急激にストレッチされて、筋肉は縮もうとするので、足は勝手に前に戻ってくるのです。

足運びは、胸から腰にかけてコントロールできるのです。

たぶんね。たぶんですよ。


そのうえで、胸部の動きをどうイメージするか……。

以前書いたとおり、鳩尾の奥に小さなペダルが埋まっているとイメージしてみたり、胸郭と骨盤がボールだと考え、ボールをゴロゴロ回すイメージで走ってみたり……。あれれ、ボールのイメージは栢野忠夫『動く骨(コツ)』に図解されていたのと同じだなと、さっき本を取り出しました。

身体は中心部が「主」で手足は「従」だとか、胸と骨盤あたりの連動など、いま考えていることが書いてある。以前読んだときはなんにも理解してなかったんだなあ、とガッカリしています。

トライアスロン ルミナ 2012年 04月号 [雑誌]

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動く骨(コツ)―動きが劇的に変わる体幹内操法

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ぺーサーやってホグレルやって……11月26日の日記

ほぼ幽霊会員ですが、所属しているランニングクラブに珍しく顔を出しました。

そのクラブ、毎年、某駅伝のための練習会を何度が開いているんです。今年初の練習会に、ペースメーカーとして馳せ参じた次第です。

なにしろ幽霊会員ですからね、「おはようございます」とか「おひさしぶりです」なんて挨拶はしませんよ。

「うらめしや〜」

本日は800mの周回コースを使い、4,000mPR+1,000mFreeというメニューです。

わたしは、5:00/kmより少し速いクラスを担当しました。

みなさんの様子を見て、4:50/kmくらいを目安にラン。200mごとにコーンが置かれています。200mを60秒で走ると5:00/kmだから、それよりちょいと速ければいいのですね。

だいたい予定通りでしたが、3番目のラップは、ほかのクラスを追い抜くときに速くなっちゃいました。後続のランナーの息づかいを聞いていたので、たぶん平気だったはずですが、反省……。

ラストのFreeでは、4分30秒/kmくらいで引っ張っていましたが、できればゴールで計測タイムを読み上げたいので、ビルドアップしながら、飛び出したランナーを追い抜いてフィニッシュ。まだまだわしのスパートはキレッキレよのう。おっほっほ……ウソです、ぜえぜえ言いながら、みんなのラップを読み上げたのでした。

  4:49/4:46/4:42/4:49/3:55(23:01)

ドリル&ストレッチ&体幹トレなど、計2時間。いい運動になりました。

         ☆

ところで。

4、5日前、ジョギングしながら通りかかった道に、一風変わった小さなジムを発見しました。初めて通るわけじゃないけど、あんまり小さすぎて素通りしていました。

帰宅後検索してみると、設置されているのはホグレルという器械らしい。筋トレというより動的ストレッチや神経系のトレーニングがおこなえるようです。小山裕史さん開発の初動負荷理論みたいなもんかしら。

都内あちこちの治療院やジムに配備されているようです。うちの近所にも数軒見つかりました。

劇的に身体が硬い私が本日、近所のジムで体験してみましたよ。

20〜30分ほど、楽しく苦しんできました。

2日に1度くらいならジョギングかねて行けるんじゃなかろうか。

入会しようかなあと考えています。